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2010 05,18 22:02 |
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クレア+シャーネ、ジャグジー+ニース 『壊れかけの硝子に優しい幻』 【マンハッタンで待ちます。何時までも貴方を待ちます。どうか、どうか探して下さい。私も貴方を探します。】 父を言い訳に使うなんて今までなかったはず。 そう、私が生きて来た今まで一度もなかった。 己のエゴで彼を殺そうとした、臆病な私。 未来を消し去ってしまいたかった、愚かな私。 何故、彼は自分を受け入れてくれたのだろう。 反復するばかりで未だ答えは導き出せない私。 そんな事を考えては今日も時間が過ぎていった。 「大丈夫かなぁ…シャーネ。ここ最近ずっと塞ぎ込んでるよ。ねぇ、ニースは何か知ってる?」 「ううん。……ただずっと元気は無いみたい。毎度溜め息ついてるわ。」 「や…ややや、やっぱりっ!何かあったんだよ!シャーネのお父さんの事かな……ううん、多分違うよね。も、もしかして僕らにでも言えない事なのかな?」 「そこまでは分からないけど……原因はだいたい検討付いてるのよね。」 「えっ」 「まあ、多分男性には分からない問題かもしれないけど。」 「――えええっ!!本当に?!ニースはすごいなあ~。」 「ありがとう。ジャグジー。」 「いや、お礼言われるほどじゃあ」 「それでシャーネなんだけど……フェリックスさんと会えないのが辛いみたい。」 「そういえば。随分会ってないみたいだよね。ま、まさか……フェリックスさんに何かあったんじゃ。どどどぉうしよう、ニース…!僕らじゃ行方なんか検討も付かないよ!」 「ジャグジーったら大袈裟。――って言いたいところだけど、今回ばかりはシャーネも相当参っちゃってるし、どうにか助けてあげたいわね。」 「よしっ…!ニース、聞いて。」 「なあに?」 「僕らで何とかしよう。……皆で聞き回れば行方ぐらいきっと掴めるよ。シャーネは僕らを沢山助けてくれた仲間だしね。苦しい時は助けてあげなくちゃ!」 「だけど、マフィアに目付けられてる私達じゃ自由にとは行かないかもよ?」 「怖い事言わないでよ、ニース!ない!ね、無い……よね?確か可能性は無いとは言いきれないけどさ。マフィア相手なんかヤダなあ。ううっ。ど、どうしよう……急に泣きたくなって来たよぅ、僕。」 「大丈夫よジャグジー。アタシ達がいるじゃない。」 「あ、ありがとうニース。そうだよね、あの人達がしがない不良集団なんか、付け狙ったところで何の足しにもならないよね。」 「まあ……ジャグジーには懸賞金が掛かってるから、それはそれで十分理由になるかも。」 「……っ!??」 「あははっごめん。冗談よ。」 「嘘だっ!ニースの場合、大抵冗談じゃなくて本気だよ。」 「そう……だったかしら?」 「あのさ、ちょっとは否定しようよ……ニース。」 『会いに行けなくてごめん。何とか落ち着いたらシャーネに会いに行くよ。だから、待たせて悪いが待っててくれ。』 自分へと贈られた文字を読んで、シャーネは幾度吐いたか分からない溜め息をついた。億劫になった心をしまう様に手紙を丁寧に折り畳む。何度読み返せば気が済むのか。思い人が帰ってくるならシャーネは何もかも投げ出したくなった。 ――何かあったのだろうか? ――父の配下である誰かに襲われたのだろうか? 一番最悪の結果に思い至る。以前彼と互角に戦ったという男がいたことを思い出した。 ――まさか。彼は……死なないと言った、私に。 シャーネはいつも心配などする必要がないほど彼を信頼していた。もし危ない目に合ったとしても彼という――クレア・スタンフィールドという男は何なく切り抜ける実力がある。なのに今回は言葉にできない不安が己の胸を支配しているとシャーネは気付いた。 ――この気持ちはなんだろう。絶対と信じているのに。 自分が弱くなったせいだろうか。クレアは言わずもながシャーネとの約束を破ることはしなかった。書き置きを見て、約束通り追いかけて来たのは彼だ。 なのにどういう事なんだろうか。あの人が何ヵ月も来ないのは。 死という存在は彼には程遠い訪れだ。だが、父という不死者の前では彼はただの人間である。いつかは老い死が訪れると父から全て教わったシャーネは知っている。 待とうとしたはずだった。霧に包まれた外とシャーネの心は今や一体化したように視界が利かない様子だった。 「あ、シャーネ。どこ行くんですか?今は霧が出てるから危ないですよ。」 「……」 「……シャーネ!危ないです――シャーネ!」 どこにいくと言うの。宛てなどないのに。 霧に包まれた街角は人気が少なく、普段の通りとはまるで勝手が違っていた。 「霧の中待ってたのか?危ないな。」 「……!」 「もしや、来るの分かった?それだったら嬉しいんだが。っと……うおっっ!」 「シャーネ。どうした?誰かに何かされたか?」 「……え、違う?俺が酷い?」 彼が悪いのだ。 こんなにも自分には彼が必要不可欠になってしまった。 「悪い。仕事長引いてさ。……シャーネを待たせるなんて俺は最低だな。」 急いで否定する。違うの。 ――無事で良かった。 「ああ、ごめん。俺はこの通りぴんぴんしてる。ほんと悪かった。」 ――もういいから。こうしててほしい。 優しく頭なでる手は彼という人間が生きて居る証拠。 「そうか。」 「久し振りだな。シャーネに抱き付かれるだなんて。」 ――夢でなくて……貴方が生きてて、よかった。 ぎゅっとコートを掴んで、シャーネは呪文のようにクレアの無事を確かめた。 「夢じゃない、俺は生きている確かにな。シャーネも俺のものである世界にいるんだ。心配する事は何一つないさ。」 ――うん。信じているから、貴方の世界を。 声は目の前の男にだけにしか聞こえない。傍から見れば、何も喋らない女と一人喋り掛ける男にしか見えないだろう。おかしいかもしれない。それでも構わないとシャーネは己の口ではっきり答えた。 「……!!」 「ほんと離したくないぐらいに可愛いぞ、シャーネ。」 クレアに覆う様に抱き締め返され、シャーネは胸が圧迫されたがもう苦しくはなかった。クレアは自分の元に帰って来てくれた。それ一つで何もかも許せる気がするのだ。 「フェリックスさーーん!!無事だったんですね!……ああ、良かったあ。」 訝しげに眉を吊り上げ、クレアは自分と婚約者の時間をぶち壊した邪魔者――顔に刺青を施された少年に眼を向けた。心の底では怒りが沸いてきたが努めて冷静に話し掛ける。 「ジャグジー。お前にも元気か?と、聞きたいところだが……今は空気読め。」 「――ええ?あ……あのっ!ご、ごめんなさいいい!そ、そんなつもりじゃなかったんです。本当です!だだだからすみませんでした!」 「慌て過ぎよ、ジャグジー。……でも、すごいですね。あのフェリックスさんがそんなに我慢なさるなんて。」 「そうだ、すごいだろう。俺もこんなにもシャーネと会うのを我慢するのは試練だった。普段ならすぐにでも会いに行くのにだ。」 「……そ、そうですか。」 「よっぽど我慢していらしたんですね。」 「そりゃもう、これでもかとな。だから、俺としては非常にお前らが邪魔だ。向こう行けって言いたいのだが。何か反論はあるかな?」 「いいえ、お邪魔してすみませんでした。さあジャグジー。行こうっか。」 「うえ!ニース!?……えっと、お、おお邪魔しました!後はお二人でどうぞ!」 「……な、シャーネ。後でジャグジーの奴をぶん殴っておいても良いか?」 「絶対駄目、だって?……まあ、最初からしないつもりだし、シャーネが言うなら我慢するさ。その代わりと言っちゃあなんだが、たっぷり抱き締めさせてくれ。」 私からも言おう。 必要なの、貴方が。 抱き締める事じゃ足りないくらいにと PR |
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