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2010 05,18 22:02 |
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香視点+越 my sister ゆらゆらと道端の青い草が揺れている。酷く穏やかな午後だった。畔道を急かされる様に一人歩いていく。 暫くして、一つの家の前へとたどり着いた。小さな白い屋根の家。そこに今一番会いたい人が住んでいる。見た目通り質素だが、機能性に溢れた作りはまるでその人みたいだった。一つも変わりないというか、記憶が確かなら幼い時から変化は無い様に思えた。 僅かに乱れた呼吸を整え、控え目に戸を叩いた。走ってくる足音がして数秒。厳しくも柔らかなまなざしをした越姉が扉を開けてくれた。 「いらっしゃい。」 「越姉、久方振りっすね。いつ以来ですか?」 「ううん……多分二か月ぐらいじゃないかと思う。」 アオザイに身をつつみ、動きやすいよう裸足でいる越姉は腕組みしていた。少し苛ついた様子で 「何か遅かったね?」 尋ねて来るので、叱られた子供みたいに答えるしかない自分がいた。 「いや……そんなことは――ないと思う、んすけど。」 「迷ったんでしょ。良いよ、上がって。」 つーか、それもお見通しって奴?居間に通されてもてなしを受ける。それから少し世間話をして、疲れていたのかそのまま意識が薄れていく。まさに眠気に誘われてうたた寝モードだ。気付いて起きた頃には太陽が傾いて山へ帰るところだった。部屋の中は夕暮れで緋色に染まっている。 隣でつられてしまったのか寝息を立てている越姉がいた。かなりこれには驚いた。自分を咎めもしないで、待つ様に静かに壁にもたれている。 ふと昔を思い出す。この人は俺の面倒を見てくれた。台湾や韓国もその一人だ。今にして思えば姉の様な存在だった。優しく、時には諌めるように接してくれた。急に英国へ行った時も、中兄より聞いた話からすれば、心配してくれたという。越姉の手を取る。この人の手はこんなに小さかったっけ?いや、自分が大きくなったのだ。しなやかで綺麗な。 「どうかしたの?」 「えっ……あ、いや。何でもないというか不手際的な」 「ふぅん、よく寝てたよ。」 「すごく眠い……ここには催眠的な何かがある様な感じじゃないっすか?本気で。」 早口で平然と言った。 安堵してしまうせいだろうか。 「それ、寝言?疲れてるなら寝ていってもいいし。寝床空いてるよ。」 「越姉。」 「ん?」 「越姉と、離れるぐらいなら……俺、昼寝なんてしたくないです。」 とてつもなく意味深な事を言ってしまった。と気付いても言い直す余裕はない。まさにその通りだった。 「……今日は甘えたい日か何か?」 「すごく、ただこうしていたいだけで……別に意味はないっす。」 「意味はない。あいかわらずだね、その甘え方。」 「その、なんというか……越姉は、側に居て欲しいし……俺。」 言いたいことがまとまらない。どうしたら伝わるのか。少し驚いた顔が見えた。越姉はすぐに言葉を発しようとしたが、息を吸って数秒の沈黙を守った。それに習って自分も押し黙る。 「香。」 凛とした声に注意深く耳をたてる。それこそ音を逃すまいと。 「アタシ、アンタが……大切なんだ。」 その台詞がどうしようもなく温かな気持ちにさせてくれた。 俺も貴方が大切なんです。 PR |
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