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2010 05,18 17:35 |
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怖い顔したジノを抱き締めるアーニャ 『欠けた悲哀の月』 「眉間。」 指摘の一言を発すると、人差し指でアーニャはとんと額を突いてきた。そんなに皺を寄せた覚えはないのに力が入っていたらしい。 「あー……ちょっとな。考え事してた。」 「……邪魔なら、帰る。」 「それはやだ。」 ソファから逃げだしそうになった彼女の腕を掴んで引き止める。夕食が済んでアーニャを自室に招いたのは俺のほうで。なのに拭えない何かに頭を取られて、結果放置に近い形で彼女を待たせていたのだ。 「何が怖いの?」 すっぽり膝元に収まった小柄なアーニャが静かに尋ねてくる。 怖い? おかしいニュアンスに首を傾げた。怯えているように見えた―まさか。何を考えていたのかと聞かない彼女の勘の良さに呆れたくなった。 「特に。まあ、要は色々あってごっちゃになってるっていうのか……そんなとこ。」 「そう。」 「そう。だから心配するな。」 「それって……苦しい?」 「さあ?うまく言えないな。」 それに当てはまる 「笑って、ジノ。」 「あ?」 「わらってて。」 「今日は…………笑えないんだ」 ぽたり。 どこから湧いて来たのか大きな赤い瞳から水が滑り落ちている。 「んなっ…!なんだ!?急に。腹。いや、どっか痛いのか?」 ぎょっとしてアーニャを見る。動かない瞳と表情は美しく精巧なアンティークの人形みたいだ。ただ表情にそぐわない涙が頬を濡らしていて、余計にそれが罪悪感を加速させる。 「ジノの顔。」 「俺の顔?」 「恐怖と寂しさそれから悲しみ。ずっとそんな顔してる。」 「だからって……泣くことないだろう。アーニャ。」 いつも冷めた光を放つはずの瞳が潤んでいる。誰にも見せないであろう綺麗さに少しだけ。 「これは違う……勝手にでただけ。」 「何だ?泣くは男の恥っていわないか?」 「関係ない。泣かないのも一つの手。でも――」 「止めろよ。そういうのは。」 「だって、慰め方。これしか知らないから。」 「別に良いって……。」 「遠慮するの?珍しい。」 「……俺にも意地はあんの。」 「つまんない。意地っぱりなジノ。」 「詰まらないってなあ」 「……明日はちゃんと笑って。じゃないと、スザクが心配する。」 「ああ、もちろん。そうするよ。」 「ちょっと、借りる。な?」 彼女の匂いが鼻の奥をつんと突く。仄かに甘やかな香り。こんなのに包まれてしまったら、全部吐き出すしか道はなく、その小さな肩に顔を擦り寄せた。涙で濡らしてしまうなんて勿体なさすぎるから余計に泣けなくなって。 「ほんと助かる。」 とお礼を言うのが精一杯だった。 「……肩の分。貸しにする。」 どう借りを返そうかなんて思いを巡らす。もしもそのルビーの様な瞳を見つめたら、生温い水が頬を伝ってしまうと情けないくらいに予感がする。アーニャは多分笑いもからかいもしないだろう。うんざりするくらいに分かってるんだ。他の奴等ならきっとからかうだろうから。 泣けないわけじゃないんだ。 いつからかちゃんとした泣き方を忘れた。 何歳から? どんな瞬間から? 泣かなくなったのか。 正直、覚えてない。 戦いに身を擦り切らせて、顔に笑顔を張り付ける事に慣れ過ぎて、忘れてしまったんだよ。きっと。 PR |
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