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2010 05,19 00:13 |
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足立+菜々子視点 今も暗闇の底にいるの?
『at midnight』 「ああ……起こしちゃったか。」 振り向かない背中は酷く頼りない。 鏡に映された足立さんの目元はうっすら赤くなっていて、鏡の中の私と目が合った。じっと逸らさずに見つめる。濯いだ顔のままで現に今も水が滴り落ちていて、足立さんは元々細身なのに余計にやつれているみたいに見える。 「こんな夜中にどうしたの?」 真新しいタオルで顔を拭いながら、足立さんは私に尋ねる。 「さっきまで勉強してて。もう寝ようかなって降りてきたら、足立さんがいたから……びっくりしちゃった。」 「ごめん、僕気分悪くてちょっとさ。大丈夫……洗面所はちゃんと綺麗にしとくよ。」 「足立さんは……眠れないの?」 ぽたぽた。 蛇口から水滴が落ちる音だけ響く。 「それほどの事じゃないよ。菜々子ちゃんこそ、遅くまで起きてて、明日学校は大丈夫?」 「もちろん。」 「ふーん……でも、いつも起きてたでしょ。」 洗面所から台所へと移動する足立さんの後に私は付いて行く。冷蔵庫の中からミネラルウォーターを一本取り出すと、足立さんは一気に飲んだ。 「いつもじゃないよ。たまたまだもん。」 自分でも見え透いた嘘だとは思う。 きっとバレるだろうな。 けれど、私は知ってる。 毎晩うなされて真夜中に決まって、洗面所へ来ること。 とめどない罪悪感に襲われて嘔吐してしまうこと。 冷蔵庫のペットボトルを一本必ず飲み干すこと。 「菜々子ちゃん、今も昔も嘘付くの下手だねぇ。」 「えっ?」 「洗面所には新しいタオル、冷蔵庫にはミネラルウォーター。君が用意してたんだよね?堂島さんはここ最近夜は帰ってきてないし。」 「それは、お父さんが酔っ払った時の為と思って。」 毎朝顔を合わす癖に、気付かない振りしてる足立さんのそういうところが嫌いだ。 「……堂島さんは知ってるの?」 「ううん知らないよ。」 「良かった良かった。堂島さんそういうとこ妙に聡いからねぇ。本能的な勘みたいなさー。」 「足立さん。」 「……ん?寝ないの?」 「毎晩、こうしてるの?」 「たまにかな。一人だと飲み過ぎちゃうみたいなんだよね。まいったなーこれじゃ」 「お酒飲まなくても……私、知ってるよ。足立さん、ほんとは――」 「知ってるなら尚更だよ。だから何?こうしてる僕が怖いってコト?」 「怖くないよ。ちっとも。」 「……ほんとにまいったなあ。」 「だから教えて……なんで寝れないの?」 「聞いたら眠るの?」 「うん」 「……君も強情だね。」 「自分の犯した事に耐え切れなくて……未だに逃げているんだよ。逃げて、逃げて、逃げて。……どこまでも。馬鹿みたいにね。」 「足立さんのそういうとこ嫌い。」 「いやにはっきり言うね。」 「だって、もう嘘つかないで良いのに。足立さんは、毎晩後悔してそれでも直視しようとしてる。そうでしょ?」 「そういうのはさ……菜々子ちゃんの為にならないよ。」 「足立さんお願い。一人で居ないで……私、ここにいるから。」 「……菜々子ちゃん。」 「あの頃より、私大きくなったんだよ?少しだけでも、足立さんのこと分かるかもしれない……全部分からなくても、ほんの少しでも。」 頼りないままの背中に体重を預け、後ろからぎゅうと抱き締める。少しだけぴくりと反応した身体。足立さんの表情は暗い影で見えない。 「…………苦しいよ。」 あまりに掠れた声。 引き剥したりしない残酷で悲しい優しさ。泣いてしまいたかった。男の人の腕力ならこの腕は簡単に解けるのに。それなのにしない。足立さんはそういう人だった。 背中はじわりと暖かく、でも震えてて。足立さんの手が遠慮がちに手を包む。このままでいても良い?とはまだ子供である私は聞けない。代わりに熱くなった頬を背中に寄せた。 この熱が貴方の痛みを和らげてくれますように。 そう思った。 ------------------------------------------ 年下なのに姉的な菜々子と年上なの弟的な足立。 PR |
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