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2008 07,07 19:48 |
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七夕☆ということでカップル幸せキャンペーンと称して、文章連投(予定)しようとおもいます。
今までの溜まっていたストック出してるだけじゃないかというツッコミはスルーなのだぜ……(吐血) バッカーノ!: クレア+シャーネ視点 『誘う者は窓からやってくる』 その人はときおり窓から現れては、私の殻を割り広げてゆく。 世界は自由に溢れ広大であると。 おとぎ噺の悪い魔法使いの様に。 昔読んでもらった童話の中で魔法使いが窓から主人公に良くない提案を持ち掛けていたことをふと思い出す。空飛ぶピーターパンも巧みに賢い少女を誘い出して、ネバーランドに連れて行った。彼はまるで生きて来た世界とは異世界の住人のようで。 私とは全て異なる人だった。 思考も 手の形も 生き方も 大切にしている人も 無くしたものも。 こつこつ 窓ガラスがこづかれる音。それがいつもの合図だ。 こんな真夜中にミリオネアロウにある屋敷の窓を叩く人はただ一人。私は疑いもなく、部屋に招きいれる為に窓の鍵をがちりと開ける。すると、屋根で答えを待って居たであろうその人は嬉しそうに顔だけを外から突き出した。 「夜中に御免。」 ――起きていたから。 「え、珍しいな。今の時間帯に正面からは入ったらジャグジー達を起こしちまうかなと思って、窓からにしたんだが……シャーネも寝てたらとは考えてなかったな。いや、起きてて良かった。」 実は寝付けないまま起きていたとは告げない。部屋に置き忘れられていた童話の本を読んでいただけで、自然と寝れれば良いなんて思ったものの彼を思い出して目がさえてしまったのだ。 窓を開けたものの一向に入ろうとしない彼に訝しげな目線を送る。 「ん?シャーネの顔を見たら、すぐに向こうへ戻るつもりだったんだが……」 あとに続く言葉が出てこない代わりにその人は、難しい顔をして片目を手のひらで覆う。 「やっぱり無理だ。シャーネとまた離れるのを辛抱するなんてできないな。」 次の仕事が控えているだろう。 もう少しだけ居てくれないかと悩んだままの彼に我が儘を言ってみる。 「なら、シャーネの好意に甘えて失礼させてもらうかな。……よっと!」 「すっかり寒くなったもんだな、N.Y.も。」 彼のコートが肩から濡れているのを見つけて、じっと観察する。 「ああ、これ?途中雨に遭遇してさ。」 まだ息を弾ませている彼は見るからに急いで来たのだろう。勿論傘も持ち合わせていない。濡れたままのコートを脱ぐ事を提案する。 「俺は風邪引かないから平気だ。」 「……。」 「俺の体が心配だって?ははは、そこらへんは全く心配いらないな。根っからの健康男児だし。まだ居るついでにコートも乾かわさせてもらうから。」 構わないという返事の代わりにタオルを頭を濡らしたままの彼に手渡す。 「ありがとうな。」 わしゃわしゃと受け取ったタオルで彼は頭をふいた。 「それと――」 「!?」 「シャーネの側にしばらく居て良いか?」 「……!……っ!」 一度は彼の腕の中に私は収まったものの、振りほどいて後ろへ下がる。顔をまともに見ることもままならない。 「あっ……と、ごめん。急に驚いたか?」 とっさに抱きすくめられた衝動に私の心臓は打つ速さを増すばかりだ。何か言わなくてはならないのに嬉しさと恥ずかしさに邪魔されて、言葉にならない。何か何か。ほんとうは心待ちにしていたのだ。貴方に抱き締めてもらいたかった。誰よりも。違うのと急いで首を振る私を見て、彼は気まずそうに表情を曇らせる。 「やっぱりあれか。殺し屋の俺が怖いのか……?」 「……!」 誤解なのにそれは違うのだと、真剣なまなざしを前にすぐに答えられなかった。 「俺が仕事とはいえ人殺しなのは否定しないさ。社会からみれば最低な人間だとも、分かってる。」 「例えシャーネが親父さんの為に俺をいくらでも利用しても構わない。けど、俺は本気だ。」 「シャーネを傷つけるものは誰であろうと許さない。それが俺自身だとしても許さない。」 「……。」 「正直に言ってくれ。俺が怖いなら。」 自身への怒りを押し込める彼を前に、どうしたら良いか分からなかった。 私を傷つけないと誓った貴方の心を傷つけて、貴方の一部になった私が裏切ったも同然なこと。 「悪い……俺も混乱してるみたいだ。日を改めた方が良いな。」 「シャーネ、すまなかった。」 「っ!」 ――嫌だ。このままなんて嫌だ。 「……っ!!」 謝る様に伸ばした手がその人の背中をつかまえておいてくれた。沈黙したまま立ち止まる。 「……」 「……、……っ!」 ――ごめん、なさい。 「……謝る必要は」 ――違うの、誤解なの 「シャーネ……泣いてるのか?」 「……ぅ……っ!」 やっと縋りついた背中はやけに大きくて、そして無性に懐かしくなった。ありったけの我が儘を込めて彼の服を掴む。気付けば頬を水が伝っていた。涙が止まらない。泣くことなんて当の昔に忘れていたはずの私だった。貴方の名前を呼びたいのに苦しくて、呼吸もままならない。しゃくりあげた反動で肩が震える。声が出ない喉で泣きじゃくる私はどうだって良かった。彼の気が済むのなら。どうでもいい。 「シャーネ。」 振り返った彼の優しい声が私を包む。体は再びその腕に治まる。 「何だその……そんな泣かないでくれ。俺も悲しくなる。」 ――貴方も……? 泣きやめなくて、素直に返事ができなかった。酷い顔をしているはずなのに隠すのも忘れて、上を見上げて彼の答えを待つ。 「悲しいさ。シャーネが泣くって事は俺の世界が泣いてるみたいなものだ。」 「だから、もし泣きたい時は俺と泣いてくれ。笑えないなら俺が幸せにする。絶対だ。」 「…!」 ――私、貴方にまだ言ってない事があるの。 「何だ?」 彼が私を見つめる。 声が出なくたって貴方に伝わるなら。 ――おかえりなさい と添えれば、彼も「ただいま」と、とても朗らかに笑った。 PR |
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