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2008 07,24 23:48 |
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『虚空を仰ぐ蒼』
「どした?」 背中の斜め四十五度からの気配。 「耳のそれ、何?」 「これ?」 「穴開いてる?……痛くないの」 確かなのかと疑うようにアーニャは顔を寄せて、 「まさか。穴なんて開いてないぞ。」 「痛い?」 「カフスっていう装飾品。挟んでるだけだし、痛くない。」 かつかつと爪先でいじる。 「ふうん。」 「これ、そんな珍しいものかねぇ。」 「別に。今付けてるのに、気づいただけの話。」 珍しく興味を持ってくれたと期待して、それをあっさりと棒に振るのが彼女という人間だ。 「ほんと今更な。撮った写真とか、見てたらわかるものじゃないか?」 「そこまでジノを見てないし。撮ってない。」 こちらを見ないままにつれない返事を返される。 「そうだ!確か前に撮ってくれたの見せてくれたよな?携帯、貸してみろって。ほら。」 「あ……」 アーニャが常に所持している携帯をするりと攫って、 「あったあった、これとか!ちゃんと付けてるだろ?」 「わかったから返して。」 「どうも。」と腕を伸ばして、ぽんと手の平へ返す。 「けど、小さいからよくわからなかった。」 ふと、小さな呟きが響く。 「おいおい、いつもどの辺り見てんの?」 「いつも……目の辺り?」 「そっか、目の辺り。……待て待て、アーニャ。なんでそこしか見ないんだよ!」 「ジノの目、蒼くて綺麗。だから、記憶する。」 紅色の目を伏せたまま、アーニャは淀みなく答えた。 何で、つぎはぎばっかりの記憶に覚えておきたいというんだ? どうしてそんなこの瞳を綺麗に思うんだ? 清清しい空の色している瞳とは似つかない愚行を犯してる 「あのなぁ……なあに、からかうつもりだ。真顔で冗談はなしだぞ。」 「嘘言ってない。いつも空みたいな目だと思ってた。」 「なら。アーニャの目は、ワイン色ってところだな。」 「……ワイン?」 「すごく透き通ってる。」 少し苦い顔された。 「んあ?何してんの?」 「……気持ちいい?」 変化のない顔から意味ある思考は多分ない。 「いんや、くすぐったい。更にいうなら、なんか変な感じ。」 むずむずとする様な、弄ぶ手が妙に好ましい感触を引きだす。 「なぁ、お返しして良い?」 足りないと渇きを満たすだけに求める。 「聞くだけ野暮。何て答えて欲しいの?」 「アーニャの捻くれもん。けど、良いな。そういうのも。」 笑って肯定したら、酷く驚いた目で見られた。 「救えない。そういうジノも相当くわせもの。」 確信を付いた台詞にくらりと眩暈がしそうだった。 「そりゃ、似たもの同士の間違いだろう。」 そう言い放って、腰を引き寄せて 少し啄ばんでから、温かい内側へと侵入する。
適度な酔いを起こす温かさ。
一緒に堕ちてくなら怖くないか、どこまでも。
犯した罪を赦されないままでも。
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